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ペット産業(医療、ホテル、美容等)におけるトラブル

人間のペットに対する事故の典型が、ペット産業(医療、ホテル、美容等)上のトラブルです。この場合には、咬傷事故のように偶発的な事故ではなく、飼い主が一定の事務処理をペット事業者に委任するという契約関係に基づく事故なので、受任者であるペット事業者は、善管注意義務(民法644条)を負っています。
ここでは、トラブルが多いペットの診療契約について詳しく説明します。

獣医師が負う法律上の責任

獣医師にペットの診療を受けさせる場合は、獣医師と飼い主との間に診療契約が結ばれます。診療契約の法的性質は、獣医師が獣医学的な知識や技術による医療を提供し、飼い主が提供された医療の対価として診療報酬を支払うことを約束する事務処理委任契約(民法656条)とされています。
したがって獣医師は、委任契約の受任者として、善良なる管理者の注意義務(善管注意義務)をもって診療を行わなければなりません(民法644条)。

獣医師が故意または過失によってこの義務に違反した場合には債務不履行責任(損害賠償、契約解除)を負います。問題は具体的にどのような場合に獣医師の故意又は過失(善管注意義務違反)が認められるかです。
善管注意義務は、獣医師が悪い結果に対して全責任を負うという結果責任の規定ではありません。善管注意義務の内容、程度は、診療行為の時点の具体的状況下における具体的注意義務を問題とします。
獣医師が具体的注意義務違反を問われる場合は、まず平均的な獣医学のレベルにある獣医師の診療行為を想定し、その平均的な診療行為を下回るような低レベルの診療行為がなされた場合ということになります。ですから、獣医師の具体的診療行為の内容や平均的なレベルにある獣医師の平均的な診療行為の内容が問題となり、相当な能力を有する弁護士や獣医師による専門的知見が必要となります。
裁判例上獣医師の過失が認められた事例として、獣医師による帝王切開が失敗して母犬が死亡した事件(東地判昭43.5.13判時528-58)が良く知られています。この場合には獣医師が母犬の胎内にガーゼを遺留する等の過失によって過失が認定されました。

トラブル回避の予防策

ところで、獣医師が善管注意義務を負うところから、獣医師としては、飼い主に対し、飼い犬の病状や傷害の原因・内容・予後、診療方針や内容、診療報酬等の費用等について十分に説明をして理解・納得してもらうことが重要となります。
特に、診療行為の危険性やそれに要する費用についてきちんと説明することがポイントです。獣医師が十分な説明をし、それを理解・納得した飼い主が診療や治療を依頼することがトラブル回避のための一番の予防策です。

まずは、法律相談のご予約をお入れ下さい。法律相談のあと、そのまま依頼しなければいけないという事はありません。お気軽にご相談にいらして下さい。

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