交通事故により損害が生じても、自身にも過失があるという場合、いわゆる過失相殺によって賠償額が調整されることになります。
また、被害者またはその相続人が事故に起因して何らかの利益を得た場合、当該利益が損害の填補であることが明らかな場合は、損害賠償額から控除されることがあります。
単純な数式で表すと、最終的に加害者側に請求できる範囲は、
交通事故による損害 × 相手方の過失割合 - 事故によって得た利益
により求められます。
民法722条2項は、「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」と規定しています。過失相殺は、公平の見地から、被害者に事故の発生や損害拡大に落ち度がある場合に損害賠償額を減額する制度です。
一般的に、各損害費目を合計して総損害額を算出し、総損害額から過失相殺して賠償額を算出するため、費目ごとに過失相殺率が異なるということはありません。
もっとも、費目ごとに過失相殺率が異なってもよいとされており、例えば、物損だけの示談を先行させた場合に、そこで合意された過失相殺率が人損の場合にも当然に及ぶとは解されていません。
過失相殺率については、現在では相当詳細に運用基準が定められ、その運用表に則って決められます。
もっとも、当該の事故がどの類型の事故にあたるのか、どのような修正がなされるのかについて理解するには、専門知識も必要となりますので、保険会社から提示された過失相殺率に疑念がある場合は、それを鵜呑みにすることなく、弁護士の意見を聞いてみるのが得策といえます。
損益相殺とは、交通事故によって損害を受けた被害者が、その事故によって利益も得た場合に、受けた利益を損害から控除して損害賠償額を定めることをいいます。
この控除については、民法その他の法律に明文があるわけではありませんが、公平の見地等から、判例によって認められています。
損益相殺として控除できるのは、利益と損害が「同一の原因」によって生じ、利益と損害との間に「同質性」がある場合とされています。
例えば、交通事故により被害者が死亡し、遺族が生命保険金を受領した場合でも、生命保険金は、既に払い込んだ保険料の対価とみなされるため、同質性がなく、損害からの控除はされないとされています。
損益相殺がされるか否かに関しては裁判例の集積があり、概ね次のとおりとなっています。
控除した例 | 控除しなかった例 |
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