交通事故を起こした場合、その加害者は、行政上、刑事上、民事上の、3種の責任を負うことになります。これらは独立別個の責任であり、それぞれ同時並行で進行します。
交通事故における行政上の責任とは、道路交通法に基づいて行われる行政処分のことで、反則金の支払い、免許の停止・取消などがあります。なお、反則金は「罰金」とは異なり、刑事上の処分ではなく、行政上の処分ですので、刑罰ではありません。そのため、反則金を科せられても前科はつきません。
交通事故によって人を死傷させてしまった場合、刑法や道路交通法に基づいて加害者に刑罰が科されます。
交通事故に関しては、刑法上、次のような条項があります。
刑法第211条2項(自動車運転過失致死傷罪)
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以上の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
刑法第208条の2(危険運転致死傷罪)
第1項
アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。その進行を制御することが困難な高速度で、又はその進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させ、よって人を死傷させた者も、同様とする。
第2項
人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、前項と同様とする。赤信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、同様とする。
交通事故を起こした場合、それによって他人に生じさせた損害について賠償しなければなりません。
損害には、人身損害(人損)と物的損害(物損)があります。
さらに、人損は、財産的損害と精神的損害に分けられ、財産的損害は積極損害と消極損害に分けられます。
もし事故が起きても被害者に対して最低限の補償ができるよう、自動車を運転する場合は、必ず自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)か、自動車損害賠償責任共済(自賠責共済)に加入している自動車を運転しなければならず、同保険に加入していない自動車を運転した場合は、刑事罰を科されることになります。
自動車損害賠償保障法
第5条
自動車は、これについてこの法律で定める自動車損害賠償責任保険(以下「責任保険」という。)又は自動車損害賠償責任共済(以下「責任共済」という。)の契約が締結されているものでなければ、運行の用に供してはならない。
第86条の3
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
1 第5条の規定に違反した者
(以下略)
自賠責保険の支払いの対象となるのは、被害者の生命又は身体に関する損害(人損)のみで、自動車の修理費等のいわゆる物損については、対象となりません。
自賠責保険による支払いの限度額は、傷害に関する損害について120万円、後遺障害に関する損害についてはその等級に応じて75万円から4000万円、死亡に関する損害については3000万円となっています。
自賠責保険の支払いについては、加害者からも被害者からも請求ができます。
いずれの場合についても、所定の用紙に必要事項を記入し、交通事故証明書、診断書、診療報酬明細書、領収書、休業損害証明書、請求者・代理人の印鑑登録証明書等必要書類を添付して、自賠責保険会社に請求します。
自賠責保険での補償額は必ずしも十分なものとはいえないため、交通事故の内容によっては、加害者が被害者に対して高額な賠償責任を負う場合があります。
任意保険は、そのような場合に備えて入る、いわば自賠責保険の「上乗せ保険」です。
自賠責保険と任意保険の保険会社が異なる場合でも、いったん任意保険会社が請求者(被保険者又は被害者)に、自賠責分も含めて一括して支払い、その後に同社が自賠責保険会社に請求するという取扱がなされています。
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