交通事故が発生すると、その被害者、加害者について損害賠償、刑事罰の問題が生じるのはもちろんですが、場合によっては、それ以外の人も当事者になることもあります。
そこで、被害者側(請求権者)、加害者側(賠償義務者)にそれぞれについて解説します。
交通事故により、被害者が亡くなった場合、被害者を相続した親族が、加害者に対する損害賠償請求権を相続により取得することになります。相続人の範囲については、相続に関するページを御参照下さい。
民法711条では、「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない」と定められています。
そのため、被害者が交通事故により死亡した場合、事故によって被害者本人が取得した慰謝料請求権を、親族が相続するだけではなく、その親族本人も固有の慰謝料請求権を取得することができます。
また、条文上では、被害者が死亡した場合についてのみ定められていますが、最高裁判所は、不法行為により傷害を負った者の母が、そのために被害者が生命を害された場合にも比肩すべき精神上の苦痛を受けたときは、民法709条と710条に基づいて自己の権利として慰謝料を請求しうると判示しました。
民法715条1項本文では、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」と定められています(使用者責任)。
例えば、従業員が、会社の仕事で自動車運転をしている際、事故により他人に損害を与えた場合、会社は、その従業員と連帯して、その損害について賠償しなければなりません。
自動車損害賠償保障法3条本文では、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。」と定められています。
この規定によって、自動車の運行供用者は、①自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、②被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと、③自動車の構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと、の3点を立証しない限り、損害賠償責任を負うことになります。
通常の損害賠償責任の追及による場合、立証責任は被害者側にありますが、この規定では加害者側に立証責任を課しています。
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