暴行、傷害といった犯罪行為により、身体に傷害を負った場合、それによって生じた損害の賠償を請求できます。
損害としては、治療費や、合理的な範囲での休業損害などが挙げられます。
また、精神的損害についても個別の事案に応じて、一定程度認められます。
暴行・傷害に関連して、裁判上認められた慰謝料額の例として、次のようなものがあります。
なお、下記はあくまでも一例であり、慰謝料額は個別具体的な事情によって、大きく変わってきます。また、あくまでも、訴訟にまで発展し、且つ、判決にまで至ったケースについてのものです。
判決 | 事案の概要(裁判所の認定に基づく) | 認容額 |
---|---|---|
東京地裁 H18.10.26 |
スポーツクラブ内でのトラブル。原告はその利用者、被告はインストラクター。 レッスン中に他の利用者とトラブルを起こす原告の行動にしびれを切らし、原告の手をとりスタジオから退出させた。その際、原告は頸椎捻挫の傷害を負った。 なお、原告についても、集団行動が要請されるクラブレッスンにおいて円滑な運用を妨げた点で落ち度がある(過失相殺3割)。 |
22万1342円 治療費 12,410円 通院交通費 23,040円 休業損害 33,582円 慰謝料 190,000円 診断書作成等12,100円 クラブ会費 16,500円 以上につき 3割の過失相殺をし、 弁護士費用 20,000円 を加える。 |
東京地裁 H17.7.25 |
マンション管理組合内部でのトラブル。原被告いずれも当該マンションの住人。 被告がマンション掲示板の掲示物を剥がすつもりで、はさみを手に持ち、掲示板付近に近づいたところ、それを阻止しようとする原告と揉み合いになった。 この揉み合いにより、原告の着衣が破れ、メガネが損壊したほか、はさみに起因するとみられる切り傷等の傷害を負った。 |
30万円
慰謝料相当額及び眼鏡等相当額を全て含めた金額として。 |
東京地裁 H17.10.18 |
交通事故の示談交渉から発展したトラブル。原告は交通事故の被害者であり、事故後、交通事故を起こしたAの自宅を直接訪問したところ、口論となり、その場にいたAの知人である被告が、原告に対し、手拳で強く殴打したほか、頭部や腹部を数回足蹴にするなどの暴行を行った。 この暴行により、原告は、全治1か月を要する鼻骨骨折、顔面打撲、歯牙破折等の傷害を負い、精神科への通院を余儀なくされ、また、鼻変形の後遺障害を負った。 なお、原告についても、電話でAと口論をするなど既に通常の話し合いが困難な状況になっているのに、Aの家に押しかけ、Aの母親に暴力を振るった上でAに詰め寄ろうとしたという落ち度がある(過失相殺5割)。 |
80万0647円 治療費等 102,294円 物損 39,000円 休業損害 100,000円 慰謝料 1,200,000円 以上につき 5割の過失相殺をし、 弁護士費用 80,000円 を加える。 |
東京地裁 H19.8.31 |
スポーツクラブ内でのトラブル。原告はその利用者、被告はインストラクター。 原告は、同クラブのスタッフに、被告のレッスンの内容に度々クレームや不満を述べるなどしており、被告もそのような原告を快く思っていなかった。 ある日のレッスン終了後、原告が被告に対し、「話がある」と述べたところ、被告も「私も話がある。」と述べた上、「あんた、わがままなんだ。」と言ったことから言い合いになった。 被告は、原告に対する日頃の鬱憤が溜まっていたことから怒りを爆発させ、原告の顔面を平手で数回叩いたほか、原告の左足を中心に少なくとも3回は足蹴りをした。被告は第三者に制止された後も、「デブ、ブス、ブタ」などと言い募りつつ原告を侮辱するような身振りを示し、さらに原告を殴りつけるなどした。 原告は、この暴行により、両膝、両下腿、両肘、左手関節部、左頸部、左腰臀部打撲・挫傷の病名で約10日間の安静加療を要する見込みとの診断を受けたほか、受傷以来、特に左膝痛、腰痛があるとされ、右下腿挫創傷、色素沈着ありと診断された。 |
130万0726円 治療費 60,076円 通院雑費等 10,650円 休業損害 300,000円 慰謝料 950,000円 以上につき、 既払金2万円を控除。 |
東京地裁 H19.6.29 |
学生寮内でのトラブル。原被告はいずれも大学生。 当該学生寮では、人と会ったら挨拶をすることとされていたが、被告に対して原告が挨拶をしなかったとして、口論になった。口論はいったん収まったが、翌日、被告が原告の居室に赴き因縁を付けた。原告は挨拶をしなかったことを謝ったが、それでも被告がしつこく絡んできたため、「おう、殴れ、ばか。」などと言って、被告に顔を近づけた。 被告は、原告の態度に激高し、両手拳で原告の顔面を十数回殴打し、さらに膝蹴りをするなどの暴行を行った。 原告は、この暴行により、左眼窩底骨折などの傷害を負った。 |
148万4200円 治療費 32,700円 入院雑費 16,500円 慰謝料 1,300,000円 弁護士費用 135,000円 |
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