夫婦の信頼関係がこじれ、家庭内別居の状態となったり、若しくは、別居を始めたが未だ離婚には至らないということも多くあります。この場合に問題となるのは離婚までの間の生活費です。特に、妻が子を連れて夫の元を離れ新生活を始めた場合、妻の収入だけでは経済的に立ち行かなくなるという深刻な問題が生じます。
この場合、夫婦が別居を始めても、婚姻を継続している以上は原則として生活費は夫婦が分担することとされておりその費用を「婚姻費用」といいます。
上記の例では、別居した妻は、夫に対し、生活費を支払うよう請求することができます。
婚姻費用の額は、夫婦双方の収入及び子らの扶養者により決まります。
別居を開始してから時間が経っているような場合でも、婚姻費用は過去に遡って請求することはできません。
そのため、婚姻費用を請求できる場合は、なるべく早期に請求するのが得策といえます。請求の方法としては、婚姻費用分担調停・審判を、家庭裁判所に申し立てるのが一般的です。
なお、調停・審判においては、調停申立て時から調停成立時までの未払い婚姻費用の請求が将来の婚姻費用請求と併せて取り扱われる場合があります。
離婚に際しては、夫婦の一方は他方に対し、夫婦共有財産の分与を求めることができます。
この財産分与は離婚時に取り決めることもできますし、離婚後であっても2年間は相手に財産分与を求めることができます。
夫婦共有財産とは、夫婦が婚姻中に協力して形成・維持してきた共同財産のことです。
これに対して、一方が婚姻前から所有していた財産や、婚姻中であっても相手とは無関係に取得した財産(相続など)のことを「特有財産」といい、財産分与の対象とはなりません。ただし、実際の調停や訴訟などでは、財産分与をめぐって激しく争われることがあります。また、預貯金等の保有財産を明らかにする資料の開示が争点となる場合があります。
離婚原因となる行為を行った配偶者、すなわち離婚について責任のある配偶者は、他方の配偶者に対し慰謝料を支払う義務があります。
代表的な離婚原因としては、不貞行為(不倫)、暴力です。なお、不貞慰謝料に関しては、男女トラブルのページも御参照下さい。
慰謝料額の算定の際、考慮される要素は、①有責性(離婚に対する責任が大きいほど高くなる)、②婚姻期間(長いほど金額が高くなる)、③慰謝料支払義務者の資力とされています。
③については、請求する側の充足感や有責配偶者への慰謝料の制裁的意味などが考慮される結果といわれています。
なお、実際の調停や訴訟の場においては、慰謝料が本来の枠を超えて、請求者の将来の生活保障や自分の人生の清算的意味合いで請求されることがあります。
離婚後、20歳未満の子どもを引き取った親(監護親)は、他方の親(非監護親)に対し、養育費を請求することができます。
養育費の金額は、監護親(権利者)と非監護親(義務者)の収入及び子どもの年齢・人数を基にして決められます。従来は、元夫婦の個別の状況を総合考慮して決められていたのですが、現在は、いわゆる養育費算定表に基づいて概ね決められます。
算定表は、東京家庭裁判所のホームページで公表されています。
年金分割とは、婚姻期間中の、配偶者の、厚生年金又は共済年金の、保険料納付実績を分割する制度です。
夫が国民年金(基礎年金)のほか厚生年金に加入しているのに対し、妻が国民年金(基礎年金)にしか加入していないという場合、離婚後、双方が受け取れる年金額には格差が生じてしまいます。
しかし、厚生年金、共済年金の保険料は夫の給与から支払われているのであり、夫がその給与を得ることができた背景には妻の貢献もあるのですから、その貢献を年金額に反映させるなどの趣旨から、年金分割の制度が生まれました。
以上の趣旨であるため、分割の対象となるのは厚生年金又は共済年金のみであり、配偶者の国民年金(基礎年金)まで分割の対象となるわけではありません。また、対象期間は婚姻期間中ということになります。
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