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ペット病院トラブルの解決実践(1) 2024.6.24

ペットを抱える老夫婦の写真

1 ペット病院のトラブル

ペットの怪我・病気を巡るトラブルについて前回はペットショップのトラブル解決実践を紹介しました。今回はペット病院トラブルの解決実践を紹介します。

ペット病院のトラブルには、獣医療過誤、逃走や保定の過誤などの医療行為に付随するトラブル、説明義務や転院義務違反、ネット上の信用や名誉の侵害・業務妨害などの二次的トラブルなどがあげられます。

交渉(調停、弁護士会仲裁を含む)と訴訟による解決方法が中心となりますが、相手方に対する(初動)初期対応によってそれぞれの方向性に大きな影響を与えます(当HP「ペット問題の処方箋(初動の戦略とスキル)」参照)。

2 獣医療過誤トラブルの特徴

病院の獣医療行為の過誤を巡るトラブルですが、獣医療過誤には人間の医療過誤にはない特徴があります。

(1)訴訟手続きは人間と同じであるが、請求金額は少額である。

人間の場合は、物損と併せて被害者本人の慰謝料請求、将来の逸失利益や休業損害、親族の慰謝料請求などの人損の賠償請求が制度上用意されていますが、ペットの場合は、物損(ペットの購入価格の修正)と飼い主の慰謝料請求(後遺症や入通院慰謝料ではなく、飼い主の精神的ショックに対する慰謝料)に限定されます。

ペットは売買の対象となるので人間と同一視できません。人間が売買の対象になると「奴隷」になり憲法上許されません。そして、法令上、ペットは人間にのみ付与される権利義務の帰属主体(権利能力)となることができません。そのため、ペット自身が慰謝料請求をすることはできないのです。

(2)協力獣医不足

人間の医療過誤の場合には医師の協力は得られやすいが、協力獣医を探すのは大変です。

医師の数、学術文献の質量、医師と弁護士の協力体制、専門弁護士の組織化、どれをとっても人間の場合と比べてペットの場合ははるかに劣っています。

人間の場合のリソース(訴訟資料や協力医師)が活用できれば良いのですが、裁判所は獣医療の学術文献に限定するので、リソースが極めて限られます。

証拠探しの苦労に直面します。

(3)ペットも人間も訴訟手続きは同じ。

我が国ではペット紛争専門の訴訟手続きはありません。ペットの医療過誤の紛争を扱う場としては重武装すぎます。

3 交渉や民事調停の活用

最愛のペットを失った遺族からすると、怒りの代償を訴訟に求める感情になりがちです。

他方、最善を尽くした病院からすると、不当な請求には訴訟で潔白を証明したい感情になりがちです。

そのため、訴訟は重武装であることを承知の上で訴訟の選択肢を選ぶ方々がいます。

合理性の基準を経済性ではなく、感情や心情という主観的な基準に求めるのです。どちらの合理性も法律と心理を融合する当事務所には理解できます。

しかし、主観のバックボーンが「自分よりも大きな不利益を被告に与えたい」「原告は自分に重い負担のかかる訴訟などできるはずはない」という気持ちは紛争の解決ではなく紛争の拡大につながる危険があります。

当事者がそのことを十分に承知していれば、私は、訴訟の方向性で準備を進めますが、悩みやためらいが見られる場合には交渉や調停の選択肢を検討します。

交渉や調停は相手方に対する書面送付から開始されますが、その場合に注意しなければならないことがあります。

それは、本人の真意を相手方に合意による解決をした方が良いと思わせることです。

本人と弁護士の解決方針が異なる場合には、書面にまず本人の事実認識、感情、要求を十分に表現します。その上で、本人の了承を得た上で、最後に弁護士の解決方針を参考程度に付け加えます。

現在の気持は本人、最後に弁護士目線の将来の方針を参考までに付け加えます。

このことは30年以上の私の経験から生まれた技術であり、気がついている専門家や実践している専門家は寡聞にして知りません(ほとんどの通知書は本人の認識や要求を代筆するだけです。)こうすれば、相手方は最初から訴訟と身構えることはなくなり、本人の現時点での真意も忠実に表現することができます。

この技術を実践に使うようになってから、合意による解決率が飛躍的に上がり、訴訟を回避できるようになりました。

ちなみに、司法書士や行政書士などの弁護士以外の法律専門職は紛争に介入できないので、本人の言い分をそのまま伝えることしかできません。私の技術は弁護士の「特権」をフル活用しているともいえます。

4 訴訟の活用

当事者が訴訟による解決を望む場合や訴訟による解決が適切な場合には訴訟を選択します。

私は獣医療過誤訴訟は通常東京地裁の医療過誤部に提起します。

訴訟による解決の場合には次の事項が重要です。

(1)証拠資料

訴訟は合意による解決とは異なり、当事者は自分の主張を裏付けるために証拠資料を提出しなければならず、提出できなければ負けます。

証拠資料は、A カルテや日記等の診断や治療に関する記録、B 獣医の意見書や学術文献、C その他、に分類され、特に、カルテ等の診断記録と学術文献は不可欠です。

意見書については、学術文献が質量ともに充実していれば、必ずしも必要ではないと考える裁判官もいますが、私は制約の多い中意見書を提出する努力をしています。

カルテ等の診断記録については、話し合いによる任意の開示(獣医の説明責任)、証拠保全(検証)、訴え提起後の任意または強制(文書提出命令等)の選択肢がありますが、事案と当事者の特徴によって使い分けます。

最大の問題は、人間の医学的文献は豊富にあるが、獣医学的文献は質量ともに限られているということです。

それでも裁判所は獣医学的文献に証拠資料を限定するので資料収集の努力が必要になります(獣医や研究者が人間の医学的文献を参考にしている実務があるので、もう少し柔軟に対応されても良いのではとは思います。)。

(2)計画審理

医療専門部の場合は計画審理がされます。ペットは人間の場合と異なり、訴訟提起前に(1)の訴訟準備が終わっている場合は「奇跡」といっても過言ではありません。

依頼者は準備不十分な状態でも早期の訴え提起を希望します。しかし、不完全な状態で訴えを提起しても弁護士が苦労することは目に見えています。

結局、弁護士は計画審理の意味も必要性も理解していますが、人間の場合とペットの場合の違いを裁判所と依頼者に説明して計画審理に反映してもらう努力が必要となります。

(3)機序(問題とする医療行為と問題とする損害との間の獣医学的メカニズム、因果関係)

問題とする医療行為と問題とする損害との間の医学的な因果関係が説明できなければ、そもそも獣医の過失の問題に入っていけません。逆にいえば、この医療行為がされなかったら死亡時よりも長生きができた相当程度の可能性が獣医学的に説明できなければ訴訟はできません。

どのような医療行為がされたかはカルテ等を検証すれば良いですが、この医療行為のどこに問題があり、この医療行為がされなかったらどのような結果になったかは当時の獣医療水準(一般的な獣医がする医療行為)や医療水準に従った医療行為がされたらどのような結果になったかが判明されなければならず、そのためには協力獣医の専門的知見や意見書が必要となります。学術文献だけでは限界があります。

そして、実際に行われた医療行為に関して当時の医療水準が明確になれば獣医や病院の過失(注意義務違反)を明確にする事ができます。

その他、訴訟の場合の注意事項は多々ありますし、そもそも獣医療過誤訴訟の仕組みややり方については分量が多すぎ、専門的でもあるので、ここでは語れません。別の機会に委ねたいと思います。

まずは、法律相談のご予約をお入れ下さい。法律相談のあと、そのまま依頼しなければいけないという事はありません。お気軽にご相談にいらして下さい。

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弁護士から解決策や費用などの具体的な提案があります。その上で依頼したいかどうか判断して下さい。もちろん、持ち帰ってお考え頂いて結構でございます。

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