
数回に分けて実際に扱った事件の解決事例を紹介したいと思います。
もっとも、多くの取り扱い事例の中の解決事例となるとある程度の類型化ができます。
実際の事例は事実関係や法律関係が複雑ですが、分かりやすい読み物というこの連載の目的に合わせて紹介したいと思います。
ペットショップから買ったペットに先天性の疾患が見つかったことによる損害賠償請求の依頼を飼主から受けました。この類型の事案はいくつも関わりましたが、いずれにも共通する主要な争点(論点)は、①契約による責任の減免の可否②保険の適用の可否③事業者の販売前の過失の有無④将来の治療費の請求の可否⑤慰謝料その他の損害賠償請求の可否です。
ここでは、全部について触れることはできないので、③、④について説明します。これらが訴訟や交渉において激しく争われるからです。
ペット販売契約の解除・合意解約の手法を使うとペットと購入代金の返還という方向で手続きや協議が進められます。
しかし、実際はそんなに簡単ではありません。
販売契約の解消→ペットと代金の返還という方向は、ペットを販売契約の対象とする民法上の「物」の考え方が前提にあるのでシナリオ通りには進みません。実際は、飼養者は、ペットに対する愛情と返還後のペットの適正飼養の不安からペットの継続飼養とペット購入後に発生する将来の治療費を請求し、ショップは、販売契約書の条項や法律論を根拠にペット代金を超える金銭の支払いには消極的です。
この場合の双方の利害調整に関する法律やルールは残念ながら用意されていないので、判決での解決では適切な解決を図れず、和解や合意による解決が試みられることになります。
飼養者側の代理人として訴訟を提起し、被告ペットショップの販売前のペットの健康管理方法の過失の存在を立証しました。
私は、事案によって訴えを起こす裁判所を通常部にする場合もあるし、医療専門部にする場合もあります。
原告代理人として、被告に対して、裁判上の送付嘱託又は調査嘱託の申立てにより、健康管理に関する内部資料の開示を強制し、被告の従前の主張や証拠との矛盾や虚偽を主張し、被告のペットの健康管理方法に過失があったことを明らかにしました。
被告側としては、その場しのぎの対応に終始し、訴訟早期での内部資料に基づく一貫した訴訟戦略の策定を行うべきでした。
このケースでは、訴訟継続中にペットの治療が終わったので将来治療費の金額を確定することができ、和解によって支払ってもらうことができました。
ペットに先天性の疾患が見つかった場合には訴訟上の和解によって解決する場合が多いのですが、双方の代理人と依頼者に交渉マインドがあったので訴訟前の合意によって解決することができました。
この場合には過去の事実関係の存否に拘泥するのではなく、訴訟の場合と交渉合意の場合の経済面、労力面、時間面の損得を冷静に検討する将来志向的な姿勢が必要となります。
一般に交渉は書面の受発信から始まりますが、私が書面を作る場合には将来の交渉を合理的かつ円滑に進めるために、弁護士の意見として、交渉方法のルールの提案を予めしておきます。いわば、「交渉のための交渉」です。そうでないと継続的な交渉が期待できないからです。
ペットの怪我や疾患のケースは、裁判所での話し合いである民事調停の利活用が適切な場合があります。私の経験上もデメリットよりもメリットの方が多いと思います。しかし、実際は、双方の交渉マインドの欠如や当事者が過去の事実関係や相手方の責任を問題とする場合が多いので訴訟での和解が選択される傾向にあります。
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