1 ペットトラブルには様々なものがあります。
ペットの咬傷事故、里親をめぐるトラブル、ペットショップやペットホテルなどのペット産業界のトラブル、動物病院や獣医師の治療をめぐるトラブル(獣医療過誤)、離婚や遺産分割時のペット所有権の帰属のトラブル、ペットの葬儀や納骨をめぐるトラブル、騒音や臭気、多頭飼育といった飼い主と近隣間のトラブル、などあげることができないほど数多くのトラブルがあります。
2 しかし、全てが人間と人間の対立の問題であり、ペット同士の問題であっても人間と人間の対立の問題として検討しなければなりません。誤解している方がたくさんいます。
このことはペットトラブルに対処する場合には、常に意識しなければなりません。
3 人間同士の問題であれば、解決方法は、①交渉による合意、②判決による強制的解決、③経過観察による状況の変化、ということになります。
どの方法が良くてどの方法が悪いと言うことはありません。
事案と相手方の特性に応じて最もふさわしい方法を選べば良いのです。
ただし、ペット問題の解決方法として理想的なのは①の交渉による解決です。
しかし、現実と理想は大きく隔たっています。
現実は②の訴訟による解決が選択される場合が多い。
交渉を嫌う当事者、寝入りを待つ当事者、正義感情や信念、激しい感情的対立、ペットに対する認識の隔たりというキーワードが浮かんできます。
これらのキーワードを分析することは次回以降にし、今回は交渉による解決を実現するにはどうしたら良いかについて2つ指摘したい思います。
4 第1に、「できるかできないか(権利義務)」だけでは問題は解決しないということです。
権利義務と並んで「どういう風にすればできるのか、どういうことをしたらいけないのか」と言う交渉の仕方(交渉戦略・戦術)について検討しなければなりません。 権利義務については弁護士の専門分野であり、法律や裁判例でよってある程度答えを見つけ出すことが出来ます。しかし、交渉戦略・戦術については法律や裁判例の中に答えを見つけ出すことはできません。
法学部の試験問題ならば、出来るか出来ないか(権利義務があるかないか)という解答を出せばOKですが、実社会はそんな簡単ではありません。どのような手段・手続きで権利を実現するかという交渉が重要です。
権利があると主張しても相手方が応じない場合が普通ですし、権利があるかはっきりしない場合であっても、適切な交渉戦略や戦術を見つけ出せば説得と合意によってお互いが満足する解決をすることかできます。これらは心理学や法交渉学の分野の問題であり、法律では答えを見つけ出すことはできません。
5 第2に、交渉による解決を図るためには、当事者が事前に交渉のルールについて合意しておく必要があります。それは、いわば「交渉のための交渉」とも言えます。
それによって、お互いに信頼関係を作り出し、円滑な交渉を実現することができます。
しかし、このことに気がつく人はほとんどいないし、気がついても適切な交渉戦略や戦術を考え出すことができないために、お互いに不本意な訴訟や泣き寝入りをすることになってしまいます。
6 ペットトラブルの解決のためには、以上のことをきちんと理解しておかなければなりません。
訴訟はペットトラブル解決の方法として相応しい場合があります。しかし、訴訟を望まない依頼者も多くいます。
そのような場合は、重武装の訴訟よりも交渉による柔軟な解決の方が好ましいことは言うまでもありません。
ところが、交渉による解決が相応しいのに、最適な交渉による解決の機会を失い、安易に訴訟合戦へと突入してしまうケースが沢山あります。弁護士が心理学や法交渉学に不慣れなためです。
7 このような安易な傾向は改善されなければなりません。そうでないと依頼者は救われません。
当事務所では、「本当に訴訟が依頼者のためになるのだろうか?」いつもそのような問題意識を持って相談に応じています。
相談のときにも、権利義務の結論だけを求める相談者もいます。
しかし、それだけではペットトラブルは解決しないことを説明して、交渉戦略や戦術の検討します。
当事務所が法律相談で法交渉心理学の話をするのはそのような問題意識があるからなのです。
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