
当事務所の特徴の一つは、当事務所が法交渉心理学と心理臨床を重視するということです。
私は、「弁護士としてどうしたら人を幸せにできるか?」、この答えを30 年以上探し求めてきましたが、その答えの一つが、説得、合意、納得のための法交渉学と心理学の融合でした(法交渉心理学)。
法交渉心理学の研究のために、多種多様な複雑な感情的対立のある事件をこなす必要があります。多種多様の事件をこなすためには弁護士業務だけでは限界があります。
そこで私は家庭裁判所の非常勤裁判官(調停官)や調停委員になり、感情的対立の激しい離婚、面会交流、親族間調整、遺産分割などの事件を数多く取り扱ってきました。
私にとって家事調停の場は法交渉心理学の臨床とフィールドワークの場でした。
説得、合意、納得の技術や理論を駆使すれば、合意によって事件が終了する確率が飛躍的に上がり、調停成立率が70%近くになり、円満の合意による申し立ての取り下げを含めると80%を超えました。まだ、家事事件手続法284条の調停に代わる審判の積極活用によって調停成立率を上げる家裁の運用がされる前で、調停成立率が50%を切ったことが問題となっていた10年ほど前の頃です。
私が実戦で長年活用してきた「法交渉心理学」は思いつきでも成功例の寄せ集めでもありません。それでは、個人的な経験の枠を出ることができません。科学的な学問的な根拠が必要です。
実践に耐えるためには、誰もがその通り行えば通常は上手くいくという一般的な応用可能性がなければなりません。
私の法交渉心理学の基盤(グラウンド)となる理論は、シンボリック相互作用論(シンボリック・イントラクティブ・シオリィ)と行動心理学です。
私は20年以上前にこの理論に出会い、爾来、研究と実践を積み重ねてきました。
この理論を簡単にいうと、
仏教の「縁」や「縁起」の考え方に似ています。この世に不変の実体はなく、あるのは関係性だけ〜違うのは、相互作用論は自己の認識と解釈を通して相手の行為の解釈をします。それがお互いに行われます。
結果、人間関係の意味は自分がどんなに思っていても、結局は相手の認識と解釈によって作られてしまいます。相手を責めても何も変わりません。
踏み込んで考えると、相手の認識と解釈は実はその前に行われた自分の行為によって作られるのです。
そして、さらに踏み込んで考えると、その自分の行為はその前に行われた相手の行為に対する自分の認識と解釈によって作られる…(以下繰り返し)。
法律の世界では行為の意味は客観的・一般的に認識・解釈されるのが原則です。しかし、セクハラやイジメについては、相手の認識と解釈によって意味づけられ、シンボリック相互作用論の考え方に馴染みます。
相手の行為は自分の行為によって作られる、相手の認識と解釈は自分の認識と解釈によって作られる。
よく言われる「自分が変われば相手も変わる」の理論的背景はシンボリック相互作用論によると説明がしやすくなります。この理論は刺激と反応という行動心理学の考え方が背景にあります。
私は20年間、家事調停の現場でシンボリック相互作用論を理論的な基盤とする法交渉心理学の立場から臨床とフィールドワークを積み重ねてきました。
いくつもの新しい理論と技術を見つけました。実践と理論の融合です。
それらの新しい理論と技術を調停外の交渉の現場で利活用しても効果を発揮しました。
私にとって調停は理論と実践のインキュベーター(incubator)なのです。
説得と合意が紛争解決の手段である場合には、当事者のどちらが先に譲歩案を提案するかという問題は実益がなく、一方が先に譲歩提案すれば、相手方の譲歩案を引き出すことができる。
私はこの法則を活用して多くの事件を合意に導いてきました。
紛争の当事者は相手方が先に譲歩してくれたら、自分も譲歩しようと考える傾向があります。しかし、双方が同じ考えのため、どちらからも譲歩案が出ずに、合意ができないで終わってしまいます。お互いに「森の中に浸かり森全体が見えない」ので、お互いに相手方が譲歩する気はないと誤解してしまいます。
しかしながら、「森全体を見る」と、どちらが先に譲歩案を提示しても相手方が同意しなければ何も決まらず、結局白紙に戻るだけです。それでも不安な人は「合意に達しなかった場合は撤回する」旨の条件付きとすれば良いのです。
シンボリック相互作用論の世界ではこちらが先に譲歩案を出せば、元々譲歩を考えていた相手方も譲歩案を出してきます。合意に達する確率が飛躍的に高まります。
シンボリック相互作用論の世界では、こちらの与える刺激によって相手方の感情をコントロールすることを考えます。強い刺激を与えれば相手方は強い反応を示す、弱い刺激を与えれば弱い反応を示す。相手方の認識を変容させるには相手方に「不安」の感情を起こさせるような刺激を与える。
相手方に「不安」の感情が起きるのは①不十分な情報②期待の裏切り③反論できない重要事実の提示の場合です。
このような場合には相手方の認識変容を招くことができ、合意の方向に誘導することが可能となります。
③については、例えば、裁判の相手方に対する反対尋問で重要な争点について相手方が反論できない客観的証拠を提示することによって、相手方に裁判の結果に対する不安な気持ちを起こさせ、和解意志に導くような場合を考えれば理解しやすいと思いますが、これを交渉の場面で行うにはどうすれば良いのかを具体的に検討します。
シンボリック相互作用論を基盤とすることは豊かな果実を法交渉心理学の理論と実践に与えてくれるのです。
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