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遺産分割協議・調停での解決例(3)(不合意戦略) 2024.6.12

遺産分割協議・調停での解決例(3)(不合意戦略)

1 合意困難と思われたときに合意が成立する現象

遺産分割協議・調停では双方の要求が衝突して合意が困難であると思われる場合に互譲や譲歩によって合意が成立することがよくあります。

このような現象は遺産分割調停の構造に起因します。

すなわち、遺産分割は審判事項なので、遺産分割調停で合意できない不成立の場合であっても、審判で裁判所が判断し、紛争の強制的解決基準が示されます。

審判には、審判期日が開かれる審判手続と審判期日が開かれない調停に代わる審判がありますが、最近では調停に代わる審判の積極的活用が進んでいます。

そうすると、審判事項は裁判所が強制的に紛争解決基準を示すのですから、裁判所が何でも判断対象とできるのではなく、判断対象は法律によって決められています。

相続財産の範囲、遺言書の効力、被相続人以外の者による預金の引出し等の使途不明金問題、葬儀費用の負担者などの前提問題や付随問題は審判での判断対象とはされていません。

これらは訴訟等で解決しなければならず、当事者の精神力や経済力が必要とされます。

そのため、訴訟等を嫌がる当事者が譲歩する傾向になるのです。

「調停は不成立から始まる」とか「不成立からが本当の調停である」という現象です。

2 不成立状態の利活用戦略

以上のことを十分に理解することができるようになると、戦略的に不成立状態を利活用できることに気が付きます。

意図的に不成立状態を作り出すことによって、双方は、「合意」と「不合意」の場合の将来の利害得失の比較衡量(利害得失を天秤にかけること)に直面することになり、眼前の交渉を現実のものとして認識させ、緊張感を持って利害調整を検討することになります。

例えば、相続財産の範囲で合意ができないと、譲歩か訴訟かの比較衡量に直面することになりますが、交渉や調停で存在証明ができない財産を訴訟で立証することは不可能です。そうすると立証責任を負う者は譲歩して合意した方が合理的です(絶対に譲歩はしたくないという当事者もいますが、それでも相手方も譲歩すれば自尊心は守られるので譲歩する当事者もいるし、実際に訴訟を起こすという局面で再調停を申し立てる当事者もいます。)

ただし、不成立状態の戦略を実践するためには、注意が必要です。

3 不成立状態の利活用戦略(不合意戦略)の注意点

(1)不合意(不成立)の場合のシミュレーション(事後予測)で自分よりも相手方が不利益になる場合に戦略を使うこと。

不合意によって自分が不利になっては意味がありません。

しかし、知識も経験もなく意地と信念だけで意気揚々と合意を拒む当事者のなんと多いことか。

思い込みと勢いで合意を拒絶して、後で後悔しないためには、訴訟の場合の立証責任の難易、時間的制約、経済状況、双方の年齢・健康状態、双方の社会的状況や社会的影響力などを冷静かつ正確に分析することが必要です。

事実関係以外に法律や訴訟の専門的知識が必要となります。

(2)「威嚇」ではなく「気づかせる」こと。

裁判所でも代理人でも「訴訟になれば負ける」、「訴訟は時間とお金がかかる」などと言って強く合意を勧める人がいますが、勧められた方は威嚇されていると感じます。

また、裁判の勝ち負けとは無関係に説得されやすい当事者が威嚇の対象とされる場合があります。

私は、非常勤裁判官時代も調停委員としてもこのような威嚇的な言動はできるだけ自制し、裁判所内部においてもそのように働きかけてきました。

威嚇ではなく、相手方が自ら自分が不利になることに気がつくように誘導することが効果的です。

さまざまな技法や戦術がありますが、私が調停委員や非常勤裁判官側としてよく使った技法として、例えば、

①過剰負担の認識
②不安心理の醸成
③法律相談の勧奨があります。

①は、調停の場面で、訴訟になった場合を想定した立証活動を当事者に体験させて、それがいかに大変かを認識してもらう手法で、双方の当事者に体験させると効果的です。

②は、双方の当事者に調停不成立後のシミュレーションさせることを通して、訴訟とは、自分の人生を自分を知らない他人が決定することになるという調停とは異質な結果になることをイメージさせるという手法です。

これらはあくまでも個々の事案と当事者の特質に沿って核心を突いたキーワードを用いて、個別具体的に行われなければなりません。

心理学と法実践の融合した十分な経験と知識が不可欠となります。

(3)不合意戦略を使うタイミングを見極めること。

あまりにも早期の段階で不合意戦略を使うのは効果的ではありません。

相当の時間と労力をかけて調停を進めてきた段階で使うべきです。

調停を進めれば進めるほど調停を無駄にしたくないという気持ちが生まれてくるからです。

調停委員や裁判官によっては不合意の可能性が濃厚な場合には調停を容易に打ち切り、双方の利害の調整を断念する傾向があります。

このような場合にも説得と理解によって調停を進行させることが大切です。

しかし、最初から不合意になることが明らかな場合は早急に調停を打ち切り、訴訟に切り替える見極めが必要です。

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