
今回は家事調停委員としての視点から遺産分割調停について実践していることについて書いてみたいと思います。
私はカウンターのお店にばかり通ってます。好みの問題ばかりではありません。流通系の企業経営カウンセラーとしては、店舗設計や運営、メニュー構成などの勉強のためにはお店の方と対面するのが一番良いからであり、また、対面の職人さんや両翼の常連さんとのコミュニケーションの実践が法交渉心理学の臨床とフィールドワークの場としても最適なのです。
遺産分割調停では、調停委員と当事者は対面です。カウンターのお店の場合と同じです。いずれも円滑なコミュニケーションのためには効果的です。
ところが、調停の場合は当事者は双方の意向により別席で行われる場合が通常なので、対面の相手は、当事者ではなく、2名の調停委員(必要に応じて裁判官)となるのが通常です。
そうすると、調停室内には対立する相手はいないし、調停委員が客とマスターみたいな関係になれば楽しい気分(ビリビリした闘争心ではなく、穏やかで満ち足りた気分という意味です。以下、同じ。)で調停ができ、仮に調停不成立でも満ち足りた気持ちで、「調停をやって良かった」という気持ちで帰途につくことができるはずです。しかも、遺産分割事件は、いわば「天からの授かり物」をありがたく分けるだけの事件であり、皆んなが利得を得ることができるのだから、楽しい調停の邪魔をするものはないはずです。
カウンターのお店の場合と同じように、調停委員と楽しく会話ができても良いはずです。
ところが、実際はそうはなりません。どうしてでしょうか?
理由のひとつとして、当事者が調停委員は敵だと思い、調停委員も自分たちが敵だと思わせるようなコミュニケーションをすることがあげられます。
調停委員は自分たちは中立公正だと説明しながら、意識的か無意識的か分かりませんが、対面する当事者の期待に反して相手方の味方であると思わせる間違ったコミュニケーションをしている場合があります。
そもそも裁判所が中立公正なのは当事者は皆んな分かっています。
しかし、制度としての中立公正と調停委員のコミュニケーションのあり方としての中立公正は違います。
調停委員の中立公正は、主観的なものであり、当事者の心情から離れては成り立ちません。
自分の味方になって欲しい当事者に対して中立公正を理由に当事者に突き放された(拒絶された)という気持ちにさせたのでは、いつまで経っても当事者は心を開きません。調停が緊張した居心地の悪い場所になってしまいます。
楽しい調停などできるはずがありません。
楽しい調停を実現するためには、調停委員の中立公正とは、突き放すのではなく、寄り添う、当事者皆んなの味方でなければなりません。
それぞれの当事者の幸せを考えて話を聞き、アドバイスをしなければなりません。
当事者同士の利害が相反する事柄については、当事者があたかもプラスとマイナスで綱引きをしているような状態なので、双方の利害を調整して当事者双方が納得のいく理由と提案をしなければなりません。理由を丁寧に、かつ、納得のいく話し方で説得することが何よりも重要になります。
調停委員の中立公正とはこのようなものなのです。
遺産分割調停は財産の分配の問題なので、当事者の心情調整のための調査官(法律ではなく心理学等の人文諸科学の専門官)は不要である〜このように裁判所が考えていた時代がほんの10年ほど前まで続きました。
しかし、その後、東京家裁の家事5部(遺産分割部)で調査官制度が採用されました。
私が非常勤裁判官時代に、遺産分割事件に調査官制度を導入することを提案していましたが、冷たい反応だった裁判所も考えてくれていたのかと嬉しくなったことがあります。
遺産分割事件の調査官は他の家事事件とは異なり、当事者の感情的対立の調整、不出頭当事者の意向確認等の手続きの円滑化と当事者の調停に対する信頼を図ることを意図しています。
しかし、これだけでは、十分ではありません。
調停委員の中立公正を理由にした常日頃の突き放す(拒絶)姿勢が、当事者の調停委員に対する不信感や拒否反応を招き、穏やかな語らいの場であるはずの調停が居心地の悪い冷たい対立的な場へと化してしまい、調停の円滑化も当事者の信頼も図られなくなります。
そこで、先に述べたように調停委員の中立公正のあり方を調停委員が当事者それぞれに寄り添う味方であると考え直すことが必要になるのです。信頼関係があるから言うことを聞いてくれ、説得ができるようになり、調停の円滑化を図ることができます。
そして、何よりも強調しなければならないのは、調停が不成立の場合であっても当事者が満足するのは、楽しい調停が実現できた場合だけであるということです。
私は調停委員や非常勤裁判官として終始一貫してこの姿勢を貫いてきました。不成立の場合であっても当事者は満足してくれました。心よく思わない調停委員がいたことは皮肉でしたが。
しかし、私は、これからも、不成立の場合も当事者が満足する調停に、楽しい調停にこだわり続けます。
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