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遺言書の怖さ 2022.11.29

1 遺言書の怖さは遺産分割のときに分かる

遺言書を作れば将来の遺産分割の問題を防げる~遺留分や税金の問題は残りますが~基本的にはその通りです。

「基本的」という言葉を使ったのは、表現が正確ではないからです。正確には「遺言書を作れば」ではなくて、「遺言書を適切に作れば」です。

どうしてかというと、ただ遺言書を作っただけでは、遺産分割の問題を回避できない場合がたくさんあるからです。

実際の遺産分割の現場では税理士や法律専門家の作った遺言書があるのに、遺言書がきちんと作られなかったために、遺産分割の問題になってしまう場合があります。長年裁判所で遺産分割の問題に関わっていると実感します。

遺言の効力、遺言者の意思能力、遺言の射程範囲、遺言書の解釈、受遺者(遺言による遺産の受取人)指定の効力などが典型です。

そのため、遺言書を作る場合には、目の前の依頼者に将来起こるであろうトラブルをイメージしながら作らなければならず、トラブル解決の場数を踏んでいない専門家の生半可の知識や経験で作ることは危険です。

2 遺言書トラブルの典型例

遺言書トラブルの典型例を分類すると、大きく①遺言書の効力の問題②遺言書の解釈の問題に分かれます。

(1)遺言書の効力の問題

①相談や裁判所でよく争いとなるのは遺言者の意思能力の問題と遺言者よりも受遺者が早く死亡した場合です。
②遺言者の意思能力

遺言者が認知症のときや遺言者が亡くなる直前に作られたような場合に遺言者の意思能力が問題となります。早期に遺言書を作ることを嫌がる遺言者もいるし、元気な親に遺言書の話を持ち出しにくいということもあります。

しかし、そのまま放置すると、遺言者の意思能力が減退し、能力的に遺言書を作ることができなくなります。

やむを得ず、遺言者の意思能力が問題となりそうなときに遺言書を作るときは次のことに注意すべきです。

第1に、遺言者に意思能力、遺言書作成能力の存在を証明する客観的な資料を準備すること。診療記録、看護日誌、看病介護日記、本人の自筆原稿、録音録画記録などなど。

第2に、公正証書遺言を利用すること。公証人は遺言者の意思能力・遺言書作成能力を確認した上で遺言書を作ってくれます。公正証書遺言は公文書であり、意思能力・遺言書作成能力のない遺言者の遺言書を作ることは禁止されているので、公証人が遺言書を作ってくれるならば、遺言者には意思能力・遺言書作成能力があるものとひとまず考えられます。

しかし、それでも、遺産分割の現場では意思能力が争われ、遺言書が無効となる場合があるのが実際です。

③受遺者の死亡

遺言者の死亡(相続開始)時に受遺者が生存していれば、その後に死亡しても、受遺者は遺言によって相続財産を取得します。受遺者の死亡時に受遺者の相続が生じます。

問題は、受遺者が遺言者の死亡よりも前に死亡した場合です。相続開始時には受遺者は存在しません。受遺者に最愛の子供がいて、遺言者が、受遺者の子供(孫)を愛し、受遺者以外の他の相続人と仲が悪かったとしても、当然に孫に受遺者の地位が移転するわけではありません。遺言者が孫に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効力を無効とされています(最高裁判所平成23年2月22日判決)。

従って、孫に遺言の効力を及ぼすためには、遺言書に受遺者が遺言者よりも早く死亡した場合は、孫を受遺者とする旨の予備的遺言をしておかなければなりません。

ところが、予備的遺言がされないために、遺言者が嫌っていた他の相続人との間で熾烈な遺産分割紛争がボッ発することになるのです(無効な遺言書が特別受益の持ち戻し免除の意思表示の証拠となることは別問題です。)。

(2)遺言書の解釈の問題

遺言書に書かれた文章や字句の意味を遺言者に聞くことは遺言者が逝去した今となっては不可能です。

また、遺言書に書かれていないことを遺言者に聞くことも同様に不可能です。

そこで何が遺言者の「真意」かを遺言書の解釈によって決める必要があります。

判例では遺言書を解釈する場合には、遺言書の字句にのみではなく、遺言書が作られた当時の遺言者と受遺者の関係、遺言者の状況などの諸事情を考慮して、遺言者の真意を合理的に探究し、できる限り有効なものとすべきであると解釈されています。

しかし、そうはいっても、というか、だからこそ、仲の悪い相続人それぞれが遺言者の「真意」を自分に有利な方向に解釈します。

最終的には裁判所が判断する場合には判例の基準を用いるのでしょうが、遺産分割調停の現場では兄弟間の不公平感や親のエコひいきに対する反感など過去の人間模様の歴史から生じた感情や心情が赤裸々に吐露されます。

例えば、父親の遺産分割のときには兄がたくさんもらったのだから母親の遺産分割では自分が多くもらいたい、今まで兄が親から良くしてもらってきたのだから、最後くらいは自分が良くしてもらってもいいんじゃないか、といったようなものです。

双方から詳しく話を聞いてみると弟にもそれなりの事情があり、弟の心情は理解できます。

双方が合意によって納得のいく解決を図ることが調停の目的なので、初めから判例を形式的に適用することを当事者に強いると弟の反感を助長することになり調停が早期に瓦解する危険があります。

調停の早期段階では当事者の心情調整が特に必要とされるのです。

しかし、遺言書が、「もれなく」「明確に」書かれていればこのような感情的な争いをしなくてもすみます。他の解釈の余地がないくらいハッキリと書かれていれば、不満のある当事者に対しても説得は容易になります。

遺言書の解釈の問題は書くべきことがたくさんあるのでここでは書ききれません。別の機会に詳しく書いてみたいと思います。

3 遺言書の怖さを繰り返します。

遺言書が有効で他の解釈の余地がなければ、遺言書の問題上は、遺言者の「真意」は最大限に尊重されます。遺産分割の問題を回避できます。

しかし、そのためには、十分な知見と経験に裏打ちされた専門家の関与が必要不可欠です。

遺産分割調停の現場では、問題となる遺言書の中には専門家が作った遺言書も含まれているのですから。

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