土日時間外相談対応24時間毎日受付

原則として平日9:30~17:30
予約で土日祝日営業時間外も法律相談対応

▲ メニューを閉じる ▲

遺産分割調停のノウハウ

1 裁判所と代理人のギャップ

家事調停委員の日課が終わりました。遺産分割事件です。平成18年に調停委員に就任してから早いもので16年が経ちました。

今日も調停委員や裁判官に感情的にまくし立てる代理人に出会いました。

このような代理人に出会うと無駄なエネルギーと努力を消耗して何になるのかと虚しくなります。時間や費用ばかりかかり、成果は得られず、しかも裁判所のひんしゅくを買い、嫌な気持ちで交渉をしなければなりません。

裁判所の外部だけではなく、長年裁判所の内部からも調停の現場を見ていると分かります。このような無駄なエネルギーや努力は調停の実務や法令などのルールに従っていないから起きるのだと。

囲碁でも将棋でも定石を無視しては成果が得られません。調停も同様に遺産分割調停のルールを無視しては成果は得られません。

ルールを上手く活用し、駆使することができれば予想外の成果を得ることも可能になります。

ルール無視の代理人はルールや法律を軽視するというよりも、ルールや法律自体を十分に理解していないのです。本人ならば許されても、代理人がこれでは不本意な結果に対してどう責任を取るのでしょうか。

2 遺産分割調停のルール無視の典型例

(1)初めから遺産の分け方を決めてもらおうとする。複数の相続人間で分け方について話がまとまらないので、裁判所に決めてもらおうとする。

二重の意味で間違いがあります。

第1に、調停と裁判の違いが分かっていません。調停は説得と合意によって当事者が自主的にトラブルを解決するもので、裁判所が決めるものではありません。裁判所が決めるのは調停で合意ができなかった場合(不成立)だけです(審判)。 

第2に、最初から分け方(具体的相続分)の話をしようとしても制止されます。家裁では決められた手続の進行があり、相続人の確定、相続財産の範囲、相続財産の評価のそれぞれについて当事者間の合意を積み重ねた後に具体的相続分の協議に入っていくのがルールです。法律、論理、調停の長期化を避けるために長年の試行錯誤の結果生み出されたルールです。

(2)遺産分割の対象にならない財産を問題にしようとする。

調停において遺産分割の対象となるのは、相続開始時点に存在し、かつ遺産分割時に現存する遺産です。相続開始時点(被相続人の死亡時)に存在しても、遺産分割時に現存しない遺産は遺産分割の対象とはなりません。

遺産分割が「今あるものを分ける」ことである以上、当然のことともいえます。ところが、これが実務上一番多く観られる間違いです。

ただし、相続開始後に相続人が預金の払い戻しを受けて現金化した場合は預金は現存しませんが、現金化したものが一部でも現存すればそれが遺産分割の対象となります。

また、遺産分割の相続開始時点に存在しない遺産は遺産分割の対象となりません。遺産とは相続開始時に存在する被相続人の財産なので、これも当然のことと言えます。 

被相続人の生前に預貯金や不動産などの被相続人の財産が相続人に移動したり、相続人の管理する売却代金が費消されたような場合(いわゆる使途不明金問題)、他の相続人からこれらの金額は遺産であるとの主張が出されたりします。しかし、これは、特別受益や損害賠償などの問題とはなっても、遺産分割の対象とはなりません。

(3)お互いの協力がなければみんな損をする。

遺産分割の対象とならない資産であっても、相続人全員の合意があれば、遺産分割の対象とすることができます。勘違いが多いのは、この取り扱いは調停だけの取り扱いであり、調停不成立後の審判ではもはや合意は問題とされず、合意がされても遺産分割の対象とはされないということです。後日、裁判(民事訴訟)などで解決を図らなければなりません。調停や審判よりもはるかにエネルギーと費用と時間を必要とします。

合意の関係でもう一点間違いがあるのは、提案の順番について、お互いに相手方に先に言わせようとすることです。心理学的に説明ができる現象ですが、もはや人間の性(さが)言っても良いくらい頻繁に見られます。

しかし、国によって制度化された調停の現場では、先に言った方が不利で後から言った方が有利ということはありません。

明らかなことは、先に言っても合意が出来なければ水に流れ、何も証拠としては残らないということです。

逆にお互いが前後に拘泥すると合意が出来なくなり、調停が不成立になる危険があります。

他にもたくさんありますが、長文になるので今回はこの程度にします。

3 すみません〜忘れてました。

遺産分割調停の事件のイメージを一言で言うと、当事者がボタンを押さなければ、ストップできないベルトコンベアーに事件が乗せられて不本意な断裁に向かって進行していくイメージです。

不本意な断裁だけは避けたい、しかしそのためには合意しなければならない、合意しないとベルトコンベアーは止まらない。

感情的な対立ではベルトコンベアーは止めることは困難です。

感情的な対立は表に出さず、お互いに合理的な交渉戦略と戦術で合意を目指さなければなりません。

すみません、1番大切な遺産分割調停に関する間違いを書き忘れました。

自分の主張は正しいのだから、相手方は応じるべきであると考えることです。

この考え方は裁判(訴訟)に馴染みます。

調停では、お互いに同じことを考えているのですから、この考えでは調停が不成立になります。

初めから訴訟で解決するのであればこの考えで良いですが、訴訟は避けたい、調停で解決したいのであれば、考え方を変える必要があります。

次回はこのことについて詳しく説明します。

まずは、法律相談のご予約をお入れ下さい。法律相談のあと、そのまま依頼しなければいけないという事はありません。お気軽にご相談にいらして下さい。

弁護士が直接お話を伺います。その上でお客さまにとって最善の解決策をご提案いたします。相談のみで解決した場合はこれで終了となります。

弁護士から解決策や費用などの具体的な提案があります。その上で依頼したいかどうか判断して下さい。もちろん、持ち帰ってお考え頂いて結構でございます。

委任契約後、弁護士は直ちに活動を開始します。その後は、こまめにお客様と連絡をとって進捗状況を報告し、お客様のご意見を伺いながら、案件の対応を進めていきます。

〒106-0032 東京都港区六本木7-3-13 トラスティ六本木ビル8階